第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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氷室の家族
みお
投稿時刻 : 2014.08.17 14:12
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氷室の家族
みお


 このカードに映るのは白い雪のような膚を持つ少年と紫袴の神官の姿である。
 少年は、元々山の清水に晒された白の神石であた。山頂に積もた雪が溶けて清水となり、その石を磨き続けた。この雪は氷室に格納され、夏には朝廷に献上される。
 石を近づけるだけで、雪は夏でも溶けず凍り続ける。そこで、この石をご神体とし、氷室神社が造られたのは一千数百年前の事。この氷は西国随一とよばれ、朝廷への貴重な献上物となた。
 石は禁足地の大地、奥深くに埋められた。それ以来、代々、禰宜は氷室とご神体を守り続けている。

 何代目の禰宜の頃であただろうか。ある夜、禰宜が禁足地を覗けばそこに一人の少年が身を起こしていた。土にまみれたその青年は、神石と同じ雪のように白い皮膚と白い髪を持ている。
 聞けば、彼こそが神石である。氷室の神である。その少年を、禰宜は護り奉た。神は人の姿を持たまま一千年の時が流れる。
 禰宜は何代、変わただろうか。少年は多くの禰宜の死を見たし、移り変わりを見た。そして数年前、彼は古ぼけた神社の奥深くにて、若い禰宜と引き合わされた。
 今回の禰宜はまだ若い男であた。若さ故だろうか、彼は氷室の神を見てもさして驚く様子を見せないし、畏れる様子も見せなかた。幾度喧嘩をしただろうか。神はそもそも人を畏れない。しかし、若い禰宜も神を畏れない。
 神託もせず、鳥居の上に寝転がり、一年中氷室の氷ばかりぼりぼり貪る神を禰宜は「穀潰し」と呼んだ。
 禰宜を降任させることもできただろうが、氷室の神は不思議とそんな気になれなかた。喧嘩の数は100を超え、やがて数年の時を経た時、神は悟た。
 これまで、果たしてここまで神に近づいた禰宜がいただろうか。これは、非常に愉快なことである。
 気がつけば、二人は家族のような顔をして今でも神殿を守り続けている。

 このカードの持つ技は、冷たい氷の風である。ただし、さほど大きなダメージを与えるわけではないし、夏の時期には却て相手に回復を与えてしまうこともある。
 ただし、使い続けるうちに敵のカードは氷室と禰宜のペースに巻き込まれ、気がつけば深淵を覗き込むこととなるだろう。
 それは神社の鳥居の内側。足を踏み入れれば楽しげに響く喧嘩の声。興味を惹かれて鳥居に足を踏み入れると、相手のカードはもうあなたの手元に吸い寄せられている。戦闘後、氷室のカードを見れば一人、誰かが増えていることに気付かされるだろう。
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