魔王の略奪
――魔王軍が故郷の国を占領した。
その話に、焦る心を抑えながら、酔いどれペンギン剣士は仲間たちとともに旅を続けていた。
本当は一刻も早く戻りたか
った。故郷に続く川を単身泳いでさかのぼり、魚で腹を満たしつつ、故郷の国を苦しめる魔王と戦いたかった。
だが、一人で魔王軍に立ち向かっても勝てるはずがない。それに、魔王に苦しめられているのは、故郷の周りの国々にも及んでいた。彼らを見捨てることはできない。
酔いどれペンギン剣士は仲間とともに魔王の配下を倒しながら、魔王の城を目指していた。
そして、ある大きな町の近くにまで来た時だった。
「ねえ、あれを見て!」
仲間である魔術師の少女が道の先を指さす。ちょうど町がある方角から、何本もの黒煙が上がっている。
慌てて駆けつけると、町は騒然としていた。城壁の一部が崩れ、建物のあちこちから煙が上がり、傷ついた兵士や住民が道のあちこちで手当を受けている。
「いったい何があったんだ?」
通りかかった住人に聞くと、
「魔王軍だ。魔王軍に襲われたんだ」
あちこちの町や村で略奪行為を行っていることは、旅の途中で何度も聞いていた。
「被害は?」
「肉や酒、それに家畜が奪われた。あと、西の広場にいたサーカス団も襲われたらしい」
――サーカス団。
その言葉に、酔いどれペンギン剣士の脳裏にある女性の顔が浮かんだ。まだ人間だった頃に愛した美しい娘だ。
彼女は、旅のサーカス団にいた踊り子だった。
(まさか)
酔いどれペンギン剣士はペタペタと大通りを駆け抜け、西の広場にたどり着く。そこには、崩れ落ちた大きなテントがあった。その周りで右往左往するサーカス団員たちの顔に見覚えがある。間違いない。彼女がいたサーカス団だ。
「おい、シアンはどこだ?」
「ぺ、ペンギン?」
突然現れたペンギンに声をかけられた団員は目を白黒させる。酔いどれペンギン剣士はもう一度問いかける。
「踊り子のシアン・ルナールは? 彼女は無事なのか?」
「彼女は……さらわれた」
「さらわれただと!」
「ああ。魔王の配下と名乗る奴らがやって来て、彼女を連れていったんだ!」
団員の言葉に、酔いどれペンギン剣士は短い翼に力をこめる。
(許さない!)
酔いどれペンギン剣士の胸に、静かに炎が燃え上がった。
【効果】
このカードを使用すると、相手が持っているキャラクターのカードを一枚奪うことができる。ただし、洗脳や催眠術のカードがないと、奪ったカードを使用することはできない。