てきすとぽい
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【BNSK】品評会 in てきすとぽい season 9
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破滅
(
木下季花
)
投稿時刻 : 2015.01.11 23:56
最終更新 : 2015.01.12 01:26
字数 : 9999
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2015/01/12 01:26:33
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2015/01/12 00:40:50
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2015/01/12 00:39:41
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2015/01/11 23:58:14
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2015/01/11 23:57:39
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2015/01/11 23:57:23
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2015/01/11 23:56:10
破滅
木下季花
「ジプシー
」という名の合法ハー
ブをあまりにも大量に吸引してしまい、俺は呼吸が止まりそうなほど過激にトリ
ッ
プをする。視界がちかちかして楽しくなるような予感を覚えたのだけれど、すぐに目に映るものや感じること全てが恐怖に成り代わ
っ
て、俺は蹲りながら「ごめんなさいごめんなさい死にます」と言い続けている、馬鹿みたいに何かに謝り続けている、そうや
っ
て何か圧しかかる恐怖の塊のような存在に向か
っ
て謝りながら、うまく息が出来ない感覚と、死が猛烈なスピー
ドで目の前をよぎる不安感を覚えて股間をぎ
ゅ
っ
と握る。同時に途轍もない倦怠感とか、心臓をぎ
ゅ
むぎ
ゅ
む握られるような悪寒とか、過去の嫌な事が唐突にフラ
ッ
シ
ュ
バ
ッ
クする感覚とか、俺の嫌いな血管の紫色の映像とかが次々と頭に浮かんできて嘔吐する、自分の吐瀉物を見ながら、俺はかすれ声で叫ぶ、苦しい苦しい苦しい、ヤバイヤバイヤバイ、死んだ方が遥かにマシだ! そんな性質の悪い絶望感が俺の脳内をひ
っ
かきまわす。ダウナー
なのかハイなのか分からない絶望。しかしその絶望と苦痛すらも麻薬のように体中を巡
っ
ている。体中がゾワゾワして、今すぐ誰かに殺されるような予感だけが続いている。バ
ッ
ドトリ
ッ
プしてしま
っ
た時はいつもこうだ。俺は「あー
ー
」と呻き声をあげながら冷たすぎる廊下に寝そべり、阿呆みたいにドアを右手で開け閉めする動作を延々と続けながら、「俺が悪いです俺が悪いです」と言いまく
っ
ていた。が、このような場合の対処法を俺は既に理解している。ハー
ブを吸い過ぎてしま
っ
たら、睡眠薬を飲めばいい。デパス辺りが良い。デパスは俺と相性がいいんだ。だから俺はそれを飲む、箱に入
っ
てる分量を全て、そしてそのままぐ
っ
すりと28時間ぐらい眠
っ
ちまえば少しはマシになる。上手く眠りさえすれば絶望の波の一番高い所は過ぎ去
っ
て、起きた時には何とか立
っ
て歩けるレベルになる。女に電話をかけたり、ニコニコ動画を見たりできる。が、もちろん絶望の波は続くから、また死にたいだとか、今すぐ自分の首を絞めたいだとか、本当に生きているのが耐えられないくらい深い、常人には絶対にわからないだろう絶望が襲
っ
てくるんだけれど、それでもトリ
ッ
プしている時や効果が切れた直後のあのヤバい感じよりかは幾分マシで、俺はだからデパスを服用して30時間ほど眠
っ
た。そうして時間をやり過ごし、脳みそを全部齧られたような気分で起き上がる。
そう言えば昨日、恐らく俺が眠
っ
ている間、本当はバイトに行かなくてはいけなか
っ
たんだと思い出す。先輩に紹介してもら
っ
たセクキ
ャ
バのキ
ャ
ッ
チの仕事で、もうこれでサボ
っ
たのは二か月前の勤め始めから計十二回にも及ぶ。けれど、俺にと
っ
てセクキ
ャ
バのバイトなんか本当はどうでもいいことで、店長や先輩が困ろうが俺は全く気にしない、だから、俺は自分の都合で勝手に休んでばかりいる。しかし先輩は俺が何をしようが、いつだ
っ
て俺を赦す。あの人はヤバい事ば
っ
かや
っ
ていて、俺が店をサボ
っ
たくらいで怒りはしない。ただ俺の事をよく可愛が
っ
てくれて、いろいろなハー
ブやクスリを紹介してくれたり、仕事先を紹介してくれる。
チラと目に入
っ
たスマホの着信履歴を見ると、セクキ
ャ
バの店長から十一件もの着信履歴が入
っ
ていた。俺は面倒だと思い、そのままスマホを放り投げた。が、放り投げてはみたものの、なんだか無性に誰かと居たいという感情が唐突に湧いてきて、以前キ
ャ
バクラのスカウトをや
っ
ていた時に見つけた、何でも俺の言うことを聴いてくれる性欲が強い女を呼ぶことにした。ト
ゥ
ルルルルル、ト
ゥ
ルルルル、ト
ゥ
ルル、おかけにな
っ
た電話番号は、電波の届かない場所に、ブツ
ッ
、なんで出ないんだよ、クソ
ッ
タレ、俺は電話を床に叩きつけて、糞が、と罵る、すでにアイツの濡れた秘所に入れることを想像して、勃
っ
ているのに、俺は行き場のない攻撃性を抱えながら、理不尽さを噛みしめる、
俺は吐き気と開放感を同時に抱えながら外に出た。そこら辺にいる女に痴漢しようとか、スタンガンで痺れさせて犯してやろうだとか
っ
て考えていたのは昔のことで、今はそんなことしない。すぐにやれる女がいるからだ。例えば街中を歩いている意志の弱そうな女に、キ
ャ
ッ
チのバイトで鍛えた押しの強さを発揮すれば意外と簡単にやれる。ただやれるだけ、その女に性欲を発散するだけ、俺にと
っ
ての女とはそういう存在で、もはや奴らには愛情なんて与えないし与えられないし、ただのオナホー
ル的な商品価値しかない存在だ。
俺は近くに住む、見た目は清純だが先輩に騙されてAVに出演してしま
っ
た女の元へ行くことを決める。そいつはAV出演によ
っ
て己の変態性を開花させ、今では命令さえすれば俺の尻の穴まで綺麗に舐めてくれる。俺はその女が住むマンシ
ョ
ンまでの、十七分ほどの道のりを歩き始める。俺は歩くのが好きだ、特にクスリが抜けていく時などは歩くようにしている、何故かはうまく説明できないけれど、思考が次々と流れて止まらない時は歩くのが一番いいんだ。
女のマンシ
ョ
ンが見えて来て、もうすぐ着くという時、路地を歩いていると前方から忌々しい高田が歩いてきた。金髪に今では流行らないような剃り込みを入れて、ジ
ャ
ー
ジ姿で、何故かバ
ッ
トを持
っ
て歩いている。馬鹿の見本市にそのまま出展できそうな高田。どうして馬鹿は揃いも揃
っ
てガムをくち
ゃ
くち
ゃ
と噛む習性があるのだろう。しかしいくら高田が馬鹿であ
っ
ても、俺はこいつから五万円を借りてそのまま逃亡してしま
っ
ている。こいつが詐欺グルー
プに居た時に、金持ちの親父を脅して百万円の収入を得たと自慢して来て、機嫌のいい高田からおこぼれを預かろうと、俺は口八丁でこいつから五万円を借りたのだ。それ以来、返す気もなく逃げていたのだが、まさかこんなところで再会してしまうとは!
「おい。おまえ吉井だろ」
高田が手に握
っ
ている金属バ
ッ
ドを地面に叩きながら俺を威圧する。こいつは漫画版ジ
ャ
イアンでもリスペクトしているのか、高橋ヒロシの描く漫画にでも出演したいのか、当たり前のようにバ
ッ
ドを握
っ
ている。俺はハー
ブに犯されて空
っ
ぽにな
っ
た脳みそで「いえ、人違いですけど」と言
っ
た。少し低めの声を意識して。元々俺の地声はキンキンするぐらい高い。しかし奴はそんなことでは騙されなか
っ
た。
「てめえ、俺の十万返せや」
何でこいつの脳内では俺の借金が倍にな
っ
ているんだ。まさかこいつが利子なんて言葉を知
っ
ている訳もなし、ただの馬鹿だから貸した金額さえも覚えていないんだろう。しかし俺がこうや
っ
て、いくら脳内で馬鹿にしたところで意味がない。奴がその暴力性にて優位に立ち、俺が窮地に立たされていることには変わりがない。
「いや、返しただろう」
俺は真剣な表情でそう言
っ
たが、その声は自分でもわかる程に震えていた。高田の持つバ
ッ
ドが、日の光を反射して俺の目に突き刺さ
っ
ている。その感覚が痛い。逃げ出したい。
「あ?」
奴は俺の胸ぐらを掴む。俺は阿呆みたいに「やめてください、やめてください、人が見てます」と言
っ
たが、馬鹿の高田はそんな事を気にしない。思い
っ
きりヘ
ッ
ドバ
ッ
ドをかましてくる。額に鈍い痛みを感じる。ああ、こうや
っ
て暴力を振るわれる瞬間に、しかし俺は確かに生きているという事を感じる、暴力の痛みこそが俺を育ててきた、俺は両親から暴力を振るわれ続けて来て、その痛みこそが確かに俺の存在を肯定してくれる、痛みは俺の日常だ。などと考えていると、
「今から銀行行
っ
て貯金を下ろさせるからな、それとお前の知
っ
ている女とやらせろ」
などといかにも命令し慣れた様子で俺に言
っ
てきた。俺は途轍もなく嫌な気分だ
っ
た、何で俺は自分をこんな場所まで追い込んだのだろう、俺は自分を恨み始めた、何故こんな最悪な状況になるまで放
っ
ておいたのだろう、俺は何もかもが嫌な気分にな
っ
て、外を歩きながら感じていた解放感が一気に霧散するのを感じた。すると、「てめえ、何睨んでんだよ」と別に睨んでもいないのに高田が言
っ
てきて、威圧するように腕を振り上げたのが見えたので、俺は何故か反射的に、足で蹴りあげた。
するとそれが、見事に高田の股間にヒ
ッ
トしてしま
っ
た。無意識に狙
っ
たのか、偶然なのか分からないが、そのおかげで俺の胸ぐらを掴む手が緩み、俺はそのまま高田の腹を蹴り上げて「死ねよ。詐欺しか出来ねえクズが、」と言いながら走
っ
て逃げる。俺は走る走る走る。そのまま街を駆け抜ける。高田から逃げなければいけない。逃げた
っ
て何一ついい事なんてないのに。しかし俺にはいつだ
っ
て逃げる事しか出来ない。俺は常にいろいろなものから逃げ続けてきた。学校や両親や社会や、俺を縛りつけようとする様々なものから。そして俺は逃げ続けた先で、こうや
っ
て悪い物に依存しながら、救いもなく暮らしている。
俺は激しく息をしながら、通りを駆け抜けていく。肺が締め付けられる感覚と、酸欠で頭がぼう
っ
とする感覚を覚えながら、果たして俺はなんで走
っ
ているのだろう、なぜ逃げる人生を選び続けているのだろうと自問している。俺はどこからどこへ向か
っ
て走
っ
ているのか、それすらも自覚できてないが、しかしそんなことを考えるのは小説家や哲学者たちのすることで、今の俺には必要ない。俺はただ自分の人生を楽しく誤魔化す、即物的なものしか必要としてない。
そんなことを地を蹴る四分の八拍子のリズムで考えながら、俺は駅前の通りにある、ふと目に止ま
っ
たスター
バ
ッ
クス・コー
ヒー
へと逃げ込んだ。何らかの象徴のようなスター
バ
ッ
クス。日本人が守り続けてきたくだらない平和の象徴のようなスター
バ
ッ
クス。アメリカの影響を象徴するようなスター
バ
ッ
クス。芸術家気取りの馬鹿な女と、内気で自意識過剰な男がよく利用する、そんなイメー
ジを持つスター
バ
ッ
クス。いつだ
っ
てカフ
ェ
という場所は、自分を表現し、共有したいと思う奴らが集ま
っ
ている。どこぞの写真家が言
っ
ていたが、カフ
ェ
とは社交の場であり、常に他人へと向ける演技をする場なのだと言
っ