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2015.03.01 00:10
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2015.03.02 12:35
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2015.03.02 12:35
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No.01 融けない雪(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/105.html
うーむ、これまたコメントが難しい作品だ……
頭がぐるぐるなりそうよん。
ときどき好きな表現はあるのだけどね。
それは空しくも壮絶な旅だったと、記録されている。とか
No.02 さようなら、またあした(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/38.html
あまり「この作者はこうだから〜」とかコメントしたくない。
だけど、この人の作品はいつもそんなコメントをしてしまうな(´・_・`)
主人公の子供時代が純真すぎて怖いです。
何でも信じちゃいそうなんだよな……
父親と同じことを安易にしないところにポリシーを感じる。
最後はこれ、近所の子のために雪だるまを作ってあげるという解釈でいいんだろうか?
ラブストーリーというお題からはちょっと外れている気がする。
彼女が初めからできていてビックリしたので、そこらへんをもっと絡めてほしかったなあと。
No.03 あなたは今でも、魔法を信じ続けていますか(木下季花)
http://text-poi.net/post/kika_kinoshita/17.html
ぶっちゃけると、大人の男が少女をかどかわすという話はあまり好みじゃないんだよね。感情の揺れ動きのパターンが決まっている気がして。雑な扱い方だと単に騙されていたとか、そうじゃない場合は真実の愛があったとか。
1年ぐらい前に桜庭一樹の「私の男」を読んだのだけど、あれは新しい気がした。ふたりならさらに堕ちてゆけるのだっていう。映画版は全然ダメだったけど。
話を元に戻して、そういう意味ではこの作品は、新しい解釈を持ち込むというものではないんだよね。けど読んでいて感じたのは、意欲作っていう感じのパワーがあった。
この作者は(って、またそういう言い方をしてしまうのだけど)、登場人物の独白みたいなのをよく書かれる。そこで時折出てくるフレーズ、というか発想にハッとさせられることがあるのだけど、今回はそういうのじゃなく、プロジェクションマッピングのところで壮大な場面を描いてやろうっていう明確な意図を感じた。
私もたまにそれを試みることがあって大抵失敗するのだけれど、この作品では文章表現が淀みなく流れていくところが見事。多分これを読んだ人は、「よーし、俺もすごい文章書いてやるぞー」っていう気分にさせられるんじゃないかな。
あ、あと、ストーリーは新しくないとか冒頭で書いたけど、四十八歳にはビックリした。いきなり三十年も飛ばすか普通。この物語の主人公は人生の三分の一以上の時間も、過去の出来事について結論を出せなかったことになる。けど、そういうものかもしれないと思った。私もこれまでの人生生きてきて、一つの物事の結論を出すのって時間がかかる。膨大な時間を使用して、人生それでいいのかって思うけど、他人が同じようなことで悩んでいるのを見かけたとき、それが人生だよって思うんだよね。
No.04 止まない雪(すずきり)
http://text-poi.net/post/tamamogari/8.html
まずはこの作品の文体を褒めなきゃいけない。
何がって、私は受験合格発表の場面、この作品より面白く書ける自信がありません。
数字は宗次郎のもう一つの名前だった、から始まり、コメディアンの振りをしたことを知らない、年に一度の珍祭。何故こんな面白い表現をいくつも続けられるのか。書き方ひとつで場面場面を面白く変えていく、これぞ文体。そしてそんな状況のなか最後に謎のヒロインが登場してくるのだから期待大ですよ!
と、冒頭から「この作品に投票しよー!」感満載で物語を読み進めていったのだが、残念ながらこの冒頭部分が私の中でのハイライトということになってしまった(´・_・`)
ヒロインであるカオルちゃんの出番がほとんどなかったというのが最も残念なのだけど、終盤になるにつれ概念のみで話を進めるみたいになったのがどーにも……
敦史はもうちょっと実際の葛藤の場面を見せないと、人物像は浮かび上がってこないんじゃないかな。
あと、梅宮さんは生気がなかった場面とか、あそこで使い捨てるには勿体無い気がした。というか主人公それでサークル辞めちゃって、なんか人生損してないかなあとか思ったりして。うん。
終わりのほうの表現は好みなのだけどね。かっこいい。
No.05 桜のおさとう(大沢愛)
http://text-poi.net/post/ai_oosawa/22.html
> 言ったことあるよ、と頰杖をついて目を伏せる。長い睫毛が反り返っている。
>「体に悪いからだめだって」
怖い……!
主人公に対してわざわざ体に悪いものを出してくる悠斗ママの威力。
「お前、分かってるんだろうなあ、ああん?」という圧力を言外に感じて、私だったらプルプルものです。
ただ、今回のお題はラブストーリーなのだけど、この冒頭部の強烈さが裏目に出て、どうにも最後までスッキリしない印象が。
作品としては最後のシーンでまとめにかかっているのだけど、いろいろ解決しないといけない問題が盛り沢山な気がして。
まず、悠斗ママと仲違いしたままだけどこれでええんか?! みたいな(^_^;) そこは置いとくにしても、私には主人公が悠斗くんとあんまり上手くいくには思えないんだよな。主人公は悠斗のいない数年のうちに人間として完成されてしまっていて、過去に悠斗が知る人物とは相当変わってしまっているんじゃないかと思っている。悠斗は悠斗で、おそらく母に逆らえるほどの胆力を身につけた彼に主人公は果たして必要なのかというと……そういう意味では、私的には健介のほうが主人公とお似合いだと思うのだけど、どうやらそういう線はないみたいだし、そうなのなあと。どうも展開的に、一本筋を通せなかったという印象が残る。
あと、最後のシーンは綺麗なのだけど、私の中で流れるBGMはケツメイシのさくらなのよね。ヒュルリーラ、ヒュルリーラ、みたいな。やや暗めの空にさくらが舞ってる感じ。作品全体的に春の印象が強かったので、主人公の名前は桜じゃなくて雪とか、そっち系の名前にしたほうがよかったんじゃないかなあと。
No.06 雪の世界を抜け出して(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/17.html
自作。
ほんわかラブストーリーにするぞ! と意気込んだものの、締め切り数日前になるまで何も思いつかず。
とりあえず最近旅行した思い出を元に書き進めたところ話が広がって、何とか投稿にこぎつけたのである。
昔いた場所に戻るという話なのに過去話が全然ないのが特徴、というか今の私にはそこまで扱いきれず省いた(´・_・`)
最近シナリオ学校に通っているのだけど、それで得られた成果といえば、多分雪合戦のところかな。以前だと「冗長だろ」で省いた気がする。全体的に説明不足にする癖は治っていないのだけど。
***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.03 あなたは今でも、魔法を信じ続けていますか(木下季花)
気になった作品:No.04 止まない雪(すずきり)
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まず雪にまつわるラブストーリーという点で、No.03とNo.04に候補が絞られた。
で、このどちらに投票するかというと、これが迷った。No.03は意欲作だけど、No.04ほうがオリジナリティーを感じるし……単純に読み返したくなるのはNo.04なのよね。展開を受け入れつつ読むことで、何か新しい知見が得られそうというか。不思議な作品である。
けど今回は僅差でNo.03に投票しようかな。
意欲作というだけでなく、最後に三十年飛ばしてしまう感性が印象に残ったのだった。この人の作品はときおり大きく時を飛ばすことがあるのだけど、その一貫性を評価してあげたいとか、そんな気持ちになったのです。
まあ今回は、文章表現について印象が残った作品が多かったね。No.03-No.05。その中でNo.04の作品だけ三人称で、私は一人称しか書けないからほんとセンスフルに感じた。
てきすとぽいでやり始めて10回目、投稿される作品がえらい独特になってきたな……(^^;;
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2015.03.04 22:37
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No.1「融けない雪」
一読して小説以前の作品だと思った。主人公の空疎な一人語りが垂れ流され、都合の良いぬるい展開の末に諦めたような結論へと至る。作中の言葉にもあるが、まさに「適当」にかわして気取っただけ。こういう作品の評価される内輪の世界もあるのだろう。だが大家と呼ばれる作家が余技のつもりで書き散らしたような作品を無名のアマチュアが書いてみせることに少しは疑問を持つべきだ。
No.2「さようなら、またあした」
二回読み返した。ラブストーリーを読み落としてしまった自分の不明を恥じながら。だがやはりラブストーリーの要素はなく、途端に前半の雪だるまの一件が索漠として見えてきた。これだけ会話のできる年齢なのに雪が何か分からないという設定は何だろう。異世界を舞台にしているわけでもなさそうだ。となると単に雪だるまが解けただけの話だ。さも意味ありげに振る舞うことに無理がある。
No.3「あなたは今でも、魔法を信じ続けていますか」
中年男に騙された中学生の三十四年を経ての回想譚。主人公の語りのそこかしこに不自然なごまかしがある。男性の作者が中学生女子の生理感覚に追いつけていない。この作品のキモに当たる部分での腰砕けは致命傷だった。そう考えると年を取って成熟したはずの主人公の語りもどこか幼い。男性経験も重ねて四十歳を越えた今なら、こんな男の死など黙[ピーーー]るくらいになっていて然るべきではないか。
No.4「止まない雪」
モンブランの万年筆で書かれたレポートとスマートフォン、タバコを吹かす大学生、という時代がごちゃまぜになった不思議な作品だった。主人公格の宗次郎・敦史いずれも受動的でいまひとつ魅力に乏しい。鞄へのこだわりも内向きで、世界へコミットする意志に乏しい。先輩やカオルから近づいてくれなければ何も起こらないままだっただろう。「雪」の登場を含めて全体的にご都合主義が目についた。
No.5「桜のおさとう」
あれよあれよという間にストーリーが展開して最後まで読まされてしまった。幼馴染・不良・再会・友達がライバル、諸要素を枚数内に無理やりに納めた印象だった。この作品で評価できるのはただ一つ。ハッピーエンドに持って行ったところだ。ラブストーリーはアンハッピーエンドの方が書きやすい。それらしさも出せる。あえてお題に食らい付いて、とにかく二人を結びつけた点だけは評価したい。
No.6「雪の世界を抜け出して」
場面をシャッフルする手法には二つのメリットがある。一つは記憶をリアルに表現できること。人間は時間的に前後しながら印象の強弱に合わせて想起する。もう一つは、書きたいことが定まらない時にとりあえず書き出すのに向いている。この作品の場合は後者ではないか。南井が尻すぼみに退場し、僕と美弥子がなぜ惹かれ合ったのかも分からないままだ。「ミステリアスな彼女」の一言ではさすがに納得できない。
***********************【投票用紙】***********************
【投票】 :No.5 桜のおさとう
気になった作品:
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◆ 『融けない雪』にコメントされました。
2015.03.07 17:39
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やはり結局は定義というより条件次第なのかなとも思いました。「終わらない恋はない」というのはある条件でなら別に終わってもいいんじゃないかと思ったり。たとえば相手を好きでなくなるという状態での恋の終わりはできれば来てほしくないものでしょうけれど、相思相愛の状態でふたりが同時に死に意識が消えた状態では、周りの人から見れば「終わった恋」と言えますが、当事者にとって「恋」というものに関しては意識がある範囲では永遠のものだったのではないのかなと。よくわからなくなってますが、溶ける雪も終わる恋も条件次第でよくもわるくもなるもので一言でさみしいものとはならないような気がしました。とりあえず幸せな終わりをプレゼントするためのリア充抹消爆弾を作りましょう。
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うわーうわー、気持ち悪いです。おもしろいです。雪とか静けさがあるなかでの重くドロドロした夜のような雰囲気が好きです。相手からのが60000字で多いと言っているけれど、こいつも10000字で充分多いじゃないかとお似合いだろと最初は思いましたが、最後まで読んでもやっぱりそうだなと思いました。出会いが14歳でなければどうなってただろうとかも考えますが。投票しました。
◆ 『止まない雪』にコメントされました。
2015.03.07 18:13
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姉が他人を弟間違えるのはどうかなーと思いつつ、"彼女だけが敦史を失わなかった"の一文はとてもいいなと思いました。前半や猫カフェなどの部分はあまりなくてもいいかなと思い、メインの3人の話などがもっとあったほうがいいかなと感じました。このお姉さんはなにかおかしくなった感じを持ちますが、弟が消える前からなにかあったんだろうか、とか弟が消える理由もそこになにかあるんだろうかなとかも考えました。
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女の子を差し出すとかケジメとかちょっと世界がわかりませんでした。これは集会とかで辞めると言ってボコられたということでいいんだろうか。ケジメというのは差し出した女の子に償うことじゃないんだろうか。あと高校生でママというのは普通なのかな。なんとなくかっこよさが薄れちゃうような気がしました。二人がメインのお話なのでしょうがないとは思うのですが、二人がメイン過ぎて他の人が二人のために存在してる感が出ているのがなにかもうひとつ足りない感じがしました。登場人物の意識の中で二人だけの世界に行くのはいいと思うのですが、外から見て二人だけの物語のための付属品としての他のキャラクターになるよりももう少しそれぞれの意識を感じたかったというような。
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"「あのさ、あのとき連れてきたダチだけどさ。あんまり嫌わないでやってくれるかな。あれでも、結構いいやつなんだよ」
僕は頷いた。だけどそれから、僕と南井くんの仲はどこかギクシャクするようになった。"
なぜだろう、ラブなストーリーより、南井くんとの話の続きが読みたいと思ってしまいました。おばあちゃんの話とかなにか南井くんキャラ立ってるなと……。メインの二人の結婚式にもきっと参列してくれることだろう、南井くん。
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2015.03.07 23:34
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No.01 融けない雪(茶屋)
感想を書くため何度か読み返し、理解しようとすればするほど、多様な解釈の仕方がある小説のようにも思えました。
主人公はあくまで「僕」でありながら、それは語り手によって便宜的に与えられた名前です。そして「僕」は語り手の友達の友達の友達の友達の友達の友達。
語り手が序盤の段階でスモールワールド現象という言葉を出しているのを見ると、
恐らく特定の誰かの物語ではなく、地球上に存在する全人類の(作者から見た不特定の人物の)会話をあえて聞き手からすれば意味が分かりにくいように、恋について語っていることがさも軽妙で、よく分からない概念ばかりを使って話されるもの、であるという皮肉も込められた小説なのではないかと感じました。
(私見であり、全く的外れの読み方かもしれません。そうでしたらすみません)
語り手は、名前も知らない、でも世界規模で見れば自分と何らかの関係はある人物たちが、
普通に恋について話しているのを、なんだかよく分からない会話をしているように聞こえる、そのようなユーモアで綴られた小説だと感じました。
女性の方は「恋」はいつか終わるものであると語り、男性の方は「たとえ恋が終わってもまた恋をすればいい」と語っています。
語り手が「僕」に言わせるのは、「終わらない恋などという考えはそもそもが概念である。その概念の証明など自分たちに果たして出来るか?」ということです。
何となくですが、女性が「いつか私たちは別れることになる」という思いを切り出し、男性の方が「いやいや、僕たちの関係だって続けようと思えばいくらでも誤魔化して続けられるよ、そもそも恋が終わるかなんて今からはっきり証明できる?」
と曖昧にごまかし、これらは普遍的な男女の別れ話を想起させるような会話に思えます。
実際に「僕」は彼女が否定した「終わらない恋」を探し求めて旅に出ています。女性と別れないため、自らの恋が続くように、その道を探し歩み続けようとします。
>>それは空しくも壮絶な旅だったと、記録されている。
という文章にもあるように、結局はその恋の中にも空虚さがあり、思いがけない波乱があり、それでもなんとか恋が続いて行ったことを聞き手に思わせます。
そして最後には「終わりが来るなら繰り返せばいい」という適当な返事をし、彼女の疑問をやり過ごそうとします。
私には、定期的に生まれる女性の不安を、男性がその場しのぎで誤魔化そうとしているようなイメージが浮かびます。
語り手が「僕」を使って語るのは、結局が「雪が融けてもまた降ってくるように、恋が終わってもまた恋に落ちればいい」
という結論なのですが、そこへ行く着くまでに聞き手をのらりくらりと惑わし、関係のない話を語ったり、
自分の表現に面白がったりしています。
語り手からすれば遠い関係である「僕」の恋についての話など、真剣に語るに値しないくらいのもの、
自分の語りたい表現を交えなければ到底つまらないものである、という冷めた表現にも思えました。
うまく言えないのですが、どこにでもいるカップルの別れ話を、視点やら言葉やらをずらして書いた、面白い試みの小説のように思いました。
どこかの男女の別れ話を(あるいは恋についての純粋な会話を)、「雪」と言う比喩を用い、とても遠くの視点から、それでも人間味を思わせる文体を使って書いていることが面白かったです。
お題が「雪にまつわるラブストーリー」ということで、全く関係ない小説にも読めるような気がしますが、
普遍的に男女が恋をしてうんぬんの物語だけでも詰まらないと思いますし、このような「雪にまつわるラブストーリー」の
解釈があっても個人的には面白いのではないかと思いました。
と言っても、雪の部分が少し弱いような気がしないでもないですが……。
もちろん、個々人によって評価するポイントは違うと思いますし、ラブストーリーがわかりやすく書けている、という評価もとても大切だと思います。
ちなみに曖昧ピコという表現はお気に入りです。
No.02 さようなら、またあした(犬子蓮木)
児童文学のような、柔らかい優しさに満ちた小説だと感じました。
綺麗な物語でほっこりしますね。
初めて見た雪。一生懸命作った雪だるま。それが翌日にあっさり溶けてしまって悲しかった子供の頃。
その別れを少しでも癒そうと父が作った嘘の手紙。
高校生になって、かつての自分と重なる子供に出合った。自分は嘘を吐かずにありのままの事実を伝えた。
自然の摂理を子供に教えるために。世にあるものはいつか壊れる時が来るし、誰かとの別れもある。
それを子供だからと言って、誤魔化すのは何か違う気がする。誤魔化したとしてもいつかはその辛さを味わう時が来るのだから。
主人公の、あるがままにそこにある自然の形を、人間の都合で捻じ曲げるのは何か嫌だ、
というある意味での頑なさが、この小説を動かしているように感じます。
雪が降るのか降らないのか、明日になれば全てが分かる。という終わり方からも、自然の流れに任せて、すべてをありのままに受け入れようという主人公の気持ちが見えた気がします。
主人公の(あるいは作者の?)とても真面目で、純真さが伝わってくる小説でした。
個人的な感想ですが、この小説に物語としての盛り上がりが無かったのが惜しいように思いました。
もしくは一つ一つの主人公の思いを、もっと掘り下げて読みたいと感じました。
別れという残酷さを、子供だからと誤魔化すのはなにか違うんじゃないか、という主人公の主張を、
もう少し色々な展開で、彼女なども絡めて表現できるように思えたのです。
今一つ、主人公の思いも、別れの残酷さも、伝わって来ずにコンパクトにまとまって終わってしまった印象を受けました。
お題に関しては、何度か読み返してみて、どのような形でお題を回収しているのだろうと探り、ラブストーリーではないよなあと思い始めたところで、
ああそうか、この小説は「雪」への愛を書いたのかと気づかされました。
そういう解釈でも確かに読める気がします。
雪だるまに対する愛情、溶けてしまったそれへの悲しみ、決して自然の摂理を人間の感傷の為に誤魔化してはいけないというある意味での潔癖とも思える頑なさ、それらは確かに人間よりも雪を対象として見ている主人公の愛とも、感じられるような気がするのです。
No.03 あなたは今でも、魔法を信じ続けていますか(木下季花)
自作。
No.04 止まない雪(すずきり)
宗次郎が気取った表現をしながら、人生における様々な重要場面で傷つかない様に、乾いた視線で物事を見つめながら生きているのが面白いと感じました。
それらを表す比喩表現もしっかり生きていたように思います(いささかクドい、大げさだと感じる人もいるかもしれませんが)。
傷つきやすい繊細な人がよく行うような、自己防衛本能。心が傷ついたと感じる前に、それを滑稽なものとしてくだらない事としてしまおう、という防衛反応。
その表現が上手だと感じました。
実際に宗次郎の内面には様々な考えが渦巻いていて、その中でもとりわけ強いのは、出来事が起こる前から最悪な状況に慣れておこうという心です。
コミュニケーションおいて全てを懐疑的に見ながら、常に最悪の事態を予想し、期待を裏切られる状況となった時に傷つかないよう、
事前に警鐘を鳴らしておきます。
あーあ最悪な結果になったよ。まあ、でもこれって事前に予想できていた事だし。仕方ないよね。
そのような心の防衛。言い訳。痛みを和らげるための心の動き。
このような人物像、心の書き方はとても面白かったです。現代の傷つきやすい若者をしっかり表現できていたように思います。
敦史についても同様です。
鞄やモンブランの万年筆などで「個性」というものを演出している敦史。
もちろんそれは他人とは違うという自意識から発する行為でもあり、
何より敦史としては、姉が自分を見つけるために行っていた差別化に基づく行為だった。
姉が持っている障害は、その人が生まれついて持っている本質ではなく、それぞれのアイテムで彩られた「個性」でしか他人を見分けられないというもの。
だからこそ、せめて解りやすい個性で己を彩っていなければ、姉は自分を見つけてくれない。
たった一人の家族である彼女の弟でいるために、見分けやすい個性で身を纏って、しっかり自分という存在を認識していてほしい。
しかしある日唐突に、唯一無二だと思っていた個性が、唯一のものではなくなってしまった。
自分と同じような「個性」を持つ者が現れてしまった。
しかも、怖れていたことが起きてしまう。
姉は自分と宗次郎の見分けがつかなかった。
だとしたら俺が今まで築いてきた個性とはなんだったのか。
自分と言う人間は何のために生きているのだろうか。
姉の近くにいるためにしっかり役割を演じていたのに、自分と言う人間を認めてくれないんじゃ、もう意味がないじゃないか。
姉の近くにいるのは俺でなくてもいいのではないか。宗次郎でもいいんじゃないのか。
もうその役割を放棄して消え去ってもいいんじゃないか。
敦史の人物造形と言いますか、「個性」というモチーフを使って、個性を奪われて消えてしまった人をしっかり表せていたように思います。
ただ、この小説においてのそれぞれの行動原理と言いますか、なぜ最終的にそのような立ち位置になったのか。
と言う説得力があまり感じられないような気もするのです。
敦史の心の葛藤が実際に言葉として書かれていない。気取った表現に紛れてしまっている。
そして宗次郎のカオルへの思いはどのようなものなのか。
宗次郎はカオルの事をどう思っているのか。
結末に至るまでのそれぞれの気持ちの揺れがはっきりと書かれずに、なぜ敦史が逃げなければならなかったのか、一読しただけでは読み取りにくいように思いました。
なぜ姉を宗次郎に任せるまでの考えに至ったのか、彼の考えがこちらにあまり伝わらないまま終わってしまったように感じたのです。
何らかの劣等感や、鬱屈とした気持ちがあったのか。敦史がどのような気持ちを抱いていたのか。
宗次郎のカオルへの思いも隠されてしまっています。
それが恋心なのか。それとももっと複雑な感情なのか。
敦史の役割を演じるために、ただカオルの傍にいるだけなのか。
何となく二人の気持ちはわかるのですが、二人がどのような考えで最終的な決意に至ったのかを深く見たいと思いました。
二人の抱えるやりきれなさが気取った表現に紛れてしまい、薄い膜を通してしか見れない歯がゆさを感じたのです。
しかし、それは作者の目論見としては成功しているようにも思います。
自分の立ち位置に悩む二人が、それぞれの役割を放棄する。
決して内面を見せることなく、軽く飛んでいくようにそれぞれの逃げ場所へ向かってしまう。色々な立ち位置を回りながら、しかしそこに決して長居することはせずに。
うまく言えないですが、繊細過ぎる若者の自意識に対する悩みと、心を守ろうとするあまり一つの場所に深く根差せない動きを作者が思うように書けているのだと思います。
梅宮さんも、本質的にこの二人と似ている人物なような気がします。
面白かっただけに、二人の切実さを雰囲気ではなく、それぞれの心の奥に触れるような表現で見たいと思いました。
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2015.03.07 23:34
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No.05 桜のおさとう(大沢愛)
非常に読みやすく、流れるような展開で最後まで淀みなく進んでいく、綺麗にまとまった小説という印象を抱きました。
この小説の中において、ママのキャラクターがとても良く効いていたのだと思います。意地悪な感じがリアルに書かれていてどきりとしました。
個人的には体を張った健介や、いきなり親友に好きな人を取られたウェリットちゃんが浮かばれないなあという感想も浮かびます。
物語の流れとしては、常に一緒に遊んでいた幼馴染の男の子に引かれつつあった桜。自分の善意と好意から起こした行動によって、その仲が引き裂かれる事態となる。
それは仲違いというわけではなく、親の圧力による理不尽な別れだった。それ以来、彼に会おうとしても会えなかった。
中学校に入り不良グループのリーダーである健介と仲良くなる。彼は仲間の女を売っていたが、桜と出逢ったことで良い方へ変わっていく。
高校で思いがけず悠斗がいることを聞かされる。しかし高校で仲良くなった親友は彼の事が好きだという。
親友のために自分は身を引こうと決意しながらも、悠斗の告白によって、長年の恋が実現する。
とても綺麗にまとまった良いお話でした。
桜と悠斗の人物像に関しても、年相応の問題や思いに囚われていて、口調や考え方も大人が書いたような無理が出ておらず、とても巧い書き方だなと唸らされました。
例えば悠斗は大人っぽく成長したように見えて、歯の浮くような科白とエピソードを絡めて告白してしまうあたり、年相応に幼くて青臭いなあと、リアリティを感じました。
高校生の男子が格好をつけて言いそうなクサい告白が、頑張って考えたんだろうなあという微笑ましさと、それでもいつか思い返したり、外側から見ている分には痛いよなあ……というリアリティを生みだしていて、青春の恋を表しているように感じます。
同様にその告白で(もちろん長年の思い人からの告白ですから当然ですが)簡単に舞い上がって色々と許してしまえる桜も、
同じくらいに幼く、高校生らしい甘さに満ちているのが、爽やかで良かったと思います。
きっと自分は幸せになれる、と信じ切っている純真さを感じました。
一つだけ気になったのは、技術の高さ故にあまりにも一つ一つの展開が簡潔に流れて行ってしまっているように見え、それぞれの場面をじっくり読みたい、主人公や周りの人物の心情を深くまで書いてほしいと感じてしまったことです。
もちろんそれは私の我儘な感想でしかないのですが、恐らくこの小説は、もっともっと長く書かれるための物語、のように見えたのです。
しかしながら、この物語を一万字におさめ、時間の流れで展開させつつ、綺麗にまとめ、しっかりと読ませるという実力に感嘆しています。
あと、健介がとても魅力的なキャラクターだったので、健介が桜と出合って変わっていく様子が詳しく描写されると、健介というキャラクターがもっと生き生きと小説にあらわれるように感じました。
もちろん釈迦に説法と言うか、その辺りは作者の方が(私なんかよりも深く)理解されておられるでしょうし、字数制限という存在が、書かれるはずだったたくさんの描写を邪魔をしたのだと思っております。
ドラマティックなラブストーリー。とても面白く読ませていただきました。
No.06 雪の世界を抜け出して(ほげおちゃん)
特別に何か大きな展開があるわけでもない。二人の仲を拗らせる事件が起こるでもない。けれど読ませる力がある。
何と言いますか、ストーリーを楽しむのではなく、作者が書くノスタルジーを楽しむ小説……と言う気がします。
上手く言えませんが。
物語としては、かつて同じ町に住んでいた幼馴染と、学友に連れられて行ったコンパで偶然再会する。
その幼馴染が、学友の友人の下劣な発言や妄想で汚されているように感じ、幼馴染を連れて街へと逃げ出してしまう。
このシーンを読んで、主人公は自分の中の綺麗な思い出が汚されるのが嫌だったのではないかと感じました。
幼馴染という人間が彼らの性の発散のために使われることの嫌悪も確かにあるとは思うのですが、
かつての町の記憶を思い起こさせる幼馴染が、今の大人になってしまった自分と関係する汚いものに汚されるのが、
無意識に耐えられなくなったのでは。
彼女が下劣な欲望の対象になったことを「アイデンティティーを汚される」と表現していることから、
彼女を自分とは別の人間・個体ではなく、自分の原風景を共有する存在として見ているように感じるのです。
だから彼女が好きと言うよりも、同じ感覚を共有できる人と一緒にいるという意識が大きく、体を寄せられるなどの好意を示されると混乱してしまうのではないか。
もちろん主人公の混乱に関しては、大人になってしまった二人の微妙な距離感、という表れもあるのでしょうが。
しかし主人公の原風景に対する無意識の純真さから導かれる混乱が、主人公と彼女を繋いでいるようにも思います。
そのあたりの、「恋から生まれたものではないけれども、一緒にいて安心できる存在」というのが就職してからも未だ付き合っていられる男女のリアリティとして感じられるような気がします。
確かにそういう愛の形って意外に多く溢れているなあ、と読みながら思わされました。
かつての思い出が二人を繋いでいる。その原風景の共有に心地よさがある。
彼女の父親の登場も、郷愁に導かれる主人公を表している良いシーンだと思いました。
***********************【投票用紙】***********************
【投票】:No.04 止まない雪(すずきり)
気になった作品:No.01 融けない雪(茶屋)
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No.4のすずきりさんの作品に投票しました。
今回の品評会、それぞれの小説の中で登場人物の感傷が書かれているのですが、No.4の作品が一番切実さを伴って書かれているように思えたのです。
もちろんそれぞれの作品を読む中で、感傷に重点を置いて比較し、それだけを評価したわけではないのですが、この作品から漂ってくる切実さに私は心を打たれたのです。
登場人物のどうしようもないやりきれなさを、作者が苦心して読者に伝えようとしている。
比喩に紛れさせながらも、若者特有の軽薄と空虚さを、小説として構成しようとしている。なんとか読者の心にテーマを訴えようという試みがこの小説から一番に感じられたので、票を入れました。
小説全体を覆っている乾いた空しさと、はっきりとしたアイデンティティを持つことが出来ない彼らの苦しみが、とても好みでした。
気になったのは、それぞれ二人の人間を三人称文体で表すことに意識を割き、二人の内面の葛藤や行動原理が直截的な言葉として現れなかったのは、個人的には惜しいという気持ちも感じるのですが、
それでも一読して分かりにくい二人の苦しみが、その行動を何度か辿ることで見えてくる構造は素直に面白いと思いました。
関心票はNo.1とNo.6で物凄く迷ったのですが、最終的にNo.1に入れました。
一読して意味の分かりにくい小説に思えるのですが、何度か読むと、意味がありそうで意味のなさそうでしかし意味ありげな書き方が、
味わい深いものに感じられたのです。
(私もまったく人の事は言えませんが)自分で書いた表現に踊らされて続きを書かされている面も見受けられるように思うのですが、
しかし最後まで自分の世界観を書ききって、観念を中心に小説を構成していき、饒舌な語り口で彩ったことに心を引かれました。
とても面白い小説でした。
No.6はとても好きですし、恋とは少し違うゆるいラブストーリーが気に入ったのですが、もう一つだけ読者の心に訴えるようなものが欲しいと感じました。
それでも普遍的な大人の男女の関係を、大きな展開を起こすことなく堂々と書き切って最後まで読ませるのはすごいと思います。
うまく読み取れていない部分はご容赦ください。読み間違えている部分は多々あるように思います。
それぞれの「愛」の物語、愛へのアプローチの仕方に個性が出ていて面白かったです。
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2015.03.08 00:21
ということで、優勝は「No.04 止まない雪(すずきり)」でした!
おめでとうございます!
優勝者は 3/14 頃までに、コメント欄に次回お題の投稿をお願いします!
◆ 一覧ページにコメントされました。
2015.03.08 01:51
次回のお題は「奇妙な話」
理屈や常識では説明出来ない(or読み解けない)物語を書きませんか。
あるいは理屈や常識で説明出来る物語でも「奇妙」なら構いません。
なお、奇妙さが作中で解決されてもされなくてもよいものとします。
字数は一万字以内。
という感じでいかがでしょうか?