我ながらホレボレする文体を自慢する大賞
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海賊王・碧と下っ端妖精とハードボイルドワンダーランド
投稿時刻 : 2013.05.04 18:45
字数 : 1688
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海賊王・碧と下っ端妖精とハードボイルドワンダーランド
伝説の企画屋しゃん


(ボクちんは主催者なので、この作品は投票対象外で、よろー


 海岸から奥に進むと、やがて背の高い樹木が生い茂ていた。
 葉の隙間から見えていた火山島の威容も、次第に密集した木々に隠されるようになていた。
 この島の特徴なのか、どの樹木も葉が肉厚だ。碧はぬかるみに足を取られながらも、一歩一歩足を進めた。風が吹いても、葉がなびくことはない。地面に落ちた葉を拾てみると、ひどく固い。まるで古代魚のウロコのようだた。間違いない、と供をするピーが言う。碧は真紅のローブを翻し、ピーに葉を手渡した。
「それ、食てみれ」
 ジリー・ロジの刺繍が輝く背中をピーに向け、碧はさらに先へ進んだ。間違いないと大見得を切たわりに、ピーの顔は訝しげだ。なんでこんな島にまで付き合わなければならないのだろう、と思う。これなら、新人の研修に付き合ていた方がまだましだ。
「おい、碧。お前が食え。これ、苦いかもしれないじん」
 海賊王の称号があるにも関わらず、ピーの態度は尊大だ。昨夜も港の漁師の話を聞いた途端、自分が船長であるかのようにふるまいはじめた。トーで出会た時に、運河に沈めておくべきだたと今更ながら後悔した。このままでは、いずれ菓子メーカーを買収しろなどと言い出しかねない。
「いいから食えや、ボケ。それが君の探しているものやろ。どうせ君が毒に当たたところで死ぬこともあらへん。船の中で仕事せえへんなら、毒見くらいしたてや」
 漁師の話では、この島にはふたつのジングルがあるという。アメの森と、ドクの森だ。葉が毒か飴であるのかは2分の1の確率。飴の味なのか、毒なのかは口に入れてみなければ分からない。
「け。海賊王の分際でびびりやがて。噂だとお前、インペルダウンにカチコミかけた時、毒でひどい目にあたらしいな。アメの森を占領したら、ドクの森に埋めたろか。勘弁してほしかたら、これ食えや。俺だて毒に当たれば、ポンポン痛くなるわ」
 碧はふと笑うと、ピーの頭を鷲づかみにした。笑てはいるが、頬がひきつている。女はタフでなければ生きていけない。発情期の熊のように、碧は全身の毛を逆立てた。
「おう、こら、そこの下端妖怪。今なにぬかした? あ? 人様の傷に触れよたな、この腐れ外道が。道頓堀のたこ焼き屋のおん並みに温厚なわしでも、それだけは聞き捨てならんよ。お前の頭でパチパチパチンやたろか? ちうどそこに灰皿代わりになるもんが転がとるわ」
 獲物を追い詰めた虎のように重く低い声を絞り出すと、碧は太い木の根元に視線を送た。宇宙の闇に包まれたかの如く森の中は静まり返ている。木の根元には、金属製の円盤が突き刺さていた。かつてここは古戦場だたのだろう。外郭に鋸状の歯が刻まれたその武具は、おそらくこの島では貴重な形而下学的な存在だ。碧は黒魔術を唱えるようにして、血のりで錆びてるけど灰皿によう似ているわ、とすごんでみせた。
「じかましいわ。ささと頭を離せや、ヘタレ海賊。お前、妖精界を敵に回してただですむと思うなよ。あのポンコツ船、海に沈めんぞ。セイレーンに根回ししたら、そんなの訳もないんじ、ドタワケが」
「おうおう、チビが一丁前にわめいてるわ。もう少し行儀よくせんと、誰も敬てくれへんで。わし、お前ほど往生際が悪いヤツ、見たことないわ。リチモンド陥落寸前のリー大佐もびくりや」
「リー大佐? なんじそり。知るかそんなもん」
 碧はあいている方の手で、ピーの口をこじ開けた。そして素早く葉を放り込む。ストーンズリバーの戦いに敗れた時、南軍の司令官は何を思たのだろうと考える。あるいは歴史が味方していれば、映画になたのはリンカーンではなく、彼の方だたのかもしれない。そう思うと少し悲しくなたが、数多の戦いを経て碧は涙をこぼすこともなくなていた。
 わしは海賊王や。
 森に棲む一角獣のように、碧は静かな目で怯えたピーの顔をのぞきこんだ。


※この話はフクシンであり、実在の人物・団体とは一切関係がありまへん。
※この文体のポイントは、高度に練られた直喩と暗喩であーる。
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