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初! 作者名非公開イベント2016秋
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アメノヒ
(
伊守 梟(冬雨)
)
投稿時刻 : 2016.08.10 10:37
最終更新 : 2016.08.21 19:12
字数 : 1458
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2016/08/18 08:23:20
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2016/08/18 08:22:06
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2016/08/10 10:37:59
アメノヒ
伊守 梟(冬雨)
カー
テンを閉め切
っ
て、私はベ
ッ
ドの中で丸くな
っ
ている。積み重ねてきた思い出と数々の失敗がフラ
ッ
シ
ュ
バ
ッ
クして、私は憂鬱になる。あれから彼は連絡をしてこない。私だ
っ
て「絶対に連絡してやるもんか」と思
っ
ている。お互いに意地
っ
張りで頑固だから、ち
ょ
っ
とした喧嘩がやたら長引く。
もう喧嘩の原因なんて忘れてしま
っ
た。彼のスマー
トフ
ォ
ンに聞いたことのない名前の女の子から電話があ
っ
たことだ
っ
け。それは先月の喧嘩の原因だ
っ
たかな。とにかくまあ、そんな感じだ。
幼いころ、私は雨が好きだ
っ
た。保育園から小学校の低学年くらいだろうか。傘をさすことや合羽を着ることがなんだか特別なことのような気がして、私は雨の日を待ち望んでいた。でも今は言わずもがなだ。
窓の向こうでは、雨がバルコニー
を濡らしている。ベ
ッ
ドの中で頭から布団をかぶ
っ
ていてもその音が聞こえてくるくらいだ。降水量なんて数字はよくわからないけれど、とにかく大雨に違いない。
枕元にある私のスマー
トフ
ォ
ンはうんともすんともいわない。彼から連絡がなければこんなものだ。もともと友だちは少なか
っ
たし、家族とは絶縁状態とい
っ
ても過言じ
ゃ
ない。もう三年、連絡をしてないし、連絡もこない。
友人であれ、家族であれ、利害を排除して良好な人間関係を構築することは極めて難しい、と私は思
っ
ている。脳の仕組みがそのようにできているのか、あるいは細胞レベルでの話なのかはわからないけれど、そういう摂理の上で私たちは生きていると考えたほうがし
っ
くりくることが多い。
彼との交際も単純に「好き」というだけで片づけられない、と思う。恋愛感情とはそれほど関係のないところで私は彼にさまざまなものを求めている。期待している、とい
っ
たほうがより正確かもしれない。
雨はいつまでた
っ
ても降りやまなか
っ
た。空の上でどこかの星の巨人が地球に向か
っ
て巨大な如雨露を傾け続けているんじ
ゃ
ないかと思えるくらいだ
っ
た。名のある学者が「近い将来、陸地がすべて海に浸食されてしまうかもしれない」などとまことしやかに語
っ
たら、私は盲目的にその臆説を信じてしまうだろう。
私は眠ることも布団から出ることもできなか
っ
た。少しでも動くと、動いた分だけ体のパー
ツがずれて私という個体が脆く壊れてしまうんじ
ゃ
ないかと思
っ
た。雨が降
っ
ていることはわか
っ
ても、雨粒の大きさや、重くたれこめた雲や、黒く濡れたアスフ
ァ
ルトがこの眼に映ることはなか
っ
た。
私はまだベ
ッ
ドの中で小さく丸くな
っ
ている。
求めるからぶつかるのだ、と私は思
っ
た。でも、相手に何も求めない恋愛なんてあるはずがない。「与え続けるのが愛」だと誰かが歌
っ
ていたけれど、そんなものの存在を肯定してしま
っ
たらい
っ
たい私は何を救いにして彼とつきあえばいいのだろう。
まだわからないだけのか、このままわからないままなのか、答えはなか
っ
た。今の私は今の私の基準で生きるほかないのだ。
不意にスマー
トフ
ォ
ンのメ
ッ
セー
ジ着信音が鳴
っ
た。雨音にまじ
っ
てその音は少しくぐも
っ
て聞こえた。
私は右手を伸ばして枕元の白いスマー
トフ
ォ
ンを掴んだ。俄に鼓動が早くな
っ
たけれど、私のからだはバラバラになることなく、ひとつの個体として生命活動を続けていた。布団の中にそれを引
っ
張り込んで画面を見ると、緑にほど近い黄緑色にデザインされた液晶デ
ィ
スプレイには覚えのない名前と悪気のない笑顔を見せる知らない女の子の写真が表示されていた。
『電話番号で新しく友だちに登録されました』
そのメ
ッ
セー
ジを見ながら、無意識のうちに私は静かな笑みを浮かべていた。
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