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この命、尽きようと【紅】
intro.
高くそびえる岩山に、大きく口を開けた穴が、ふたつ並んでいる。かつて魔王がいた時代、魔物に掘らせて作ったという洞窟だ。
あなたはある理由でこの洞窟に挑まなくてはならない。中には多くの危険が潜んでいることだろう。
挑戦者はあなたひとりではなく、もうひとり、同じ理由でここに佇んでいる男性がいる。しかし掟によりひとつの入口に入れるのはひとりまでだ。それぞれ別の穴に入って、洞窟内を進んでいかなくてはならない。
男性と話し合ったすえ、あなたは左の入口に、男性は右の入口に入ることが決まった。
互いの健闘を祈りながら、ふたりは各々穴の前に立つ。
冒険のはじまりだ。
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01
洞窟内に足を踏み込む。視界の向こうは暗く、暗闇がまるで手招きしているかのようにうごめいて見える。あなたは発光魔法を指先に照らした。指を前へかざしながら進んでいく。
小さいころは、この穴には決して入っていけないと言い聞かされていたものだった。どうしてなのかと問いただしても、親が詳細を教えてくれることはついぞなかった。
ごつごつとした岩の通路が続いている。左右の壁を注視し、前方の足元を確認し、慎重に歩んでいく。魔物が作った通路だ、どんな罠があるかわからない。
しかし案外に静かなもので、音を吸い込んだような暗闇が、光に押されながらうごめいているばかり。危険な様子は感じられない。一歩一歩と進んでいくうちに警戒心も緩んでいって、その瞬間、足元が何かを踏んだ。
ぐに、という柔らかい感触。岩とは大違いの、感触。
*あなたは……
おそるおそる足元を確認する→02へ
確認せず前へと走る→03へ
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02
あなたはおそるおそる足元を確認した。
ゆっくりと、指先を足元に近づける。腰のあたりまで指を下げて、ようやく、何を踏んだのか把握できた。
魔物の死体だ。どの動物とも似ても似つかない、小型の四足動物。腹にざっくりと大きな傷が走っている。まだ新しい。
ふぅ、とひとつ息をつくとともに、あなたは再度警戒を強めた。この魔物を殺めた別の魔物が、きっとまだ近くに潜んでいるのだろう。
あなたは、より慎重に、進んでいく。
するとすぐに、少し前方に生き物の息遣いがあることに気づいた。ぎょろりとふたつの目を向けた、爪の長い魔物だ。その魔物はあなたの光に当てられて、おびえた様子でこちらを窺っている。
もし確認せずにあそこに突っ込んでいたら、先ほどの死体のように、腹を掻っ切られていたかもしれない。そう思うと背筋が震えた。
しかしあなたに戦闘能力はない。そして掟により一度入った入口から逃げることも不可能だ。
*あなたは……
魔物と戦闘する→04へ
魔物をメロメロにする→05へ
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03
あなたは足元は確認せずそのまま走った。きっと何か危険なものを踏んだのだ。すぐにでもその場を離れるべきだと考えた。
ところがすぐに胸が熱くなった。ごぼ、と喉の奥から何かが溢れてくる。胸に手を当てると、黒く血塗られているのがわかった。訳もわからないまま血がどろどろと流れている。
キキキキキと暗闇を引き裂く声が、目と鼻の先から聞こえる。ぎょろりとふたつの目を向けた、爪の長い魔物がそこにはいた。
ああ、こんなものがいるところに、あなたは突っ込んでいってしまったのか。
遠のいていく意識のなかで、あなたは自らの浅はかさを恨んだ。
GAME OVER
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04
GAME OVER
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05
あなたは魔物をメロメロにすることにした。
手始めに髪をかきあげセクシーポーズを取る。
「オオ……」
魔物はメロメロになった。
「ありがとう。スケベ爺の心を取り戻せたわい」
「えっ」
そして唐突に語り始めた。
「ワシは元は人間じゃ。お嬢ちゃんのように、村の掟を破ってしまい、ここの試練を受けされられたのじゃ。そしてワシは死んだ。ワシの心は成仏することもできず、この洞窟で、魔物として生まれ変わったらしいわい」
饒舌な魔物だった。あなたは呆気にとられるも、とりあえずその魔物を同行させることにした。この洞窟について何か情報が得られるだろうと踏んだのだ。
事実、それはこの中について非常に詳しかった。そして久々に人間と会話をするのが楽しいらしく、黙っていても勝手にべらべらと情報を垂れ流してくれる。
いわく、洞窟は曲線の一本道で、ふたつの入口は洞窟の奥でつながっているらしい。
*→06へ
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06
進んでいくと、別の入口から入った戦士と邂逅した。
「あ、お兄様!」
彼はあなたの兄だ。そしてあなたの夫となる人でもある。
「おお、妹よ。無事だったか!」
兄は顔を綻ばせた。あなたは兄に抱き着き、その鎖骨のにおいをかぐ。
またこれをかげるなんて、ああ、生きていて良かった!
「なんと、おぬしら兄妹なのか……それは残念なことじゃ」
魔物が悲しそうに言う。
「なんだそれは」
「ここから出られるのは一人だけなのじゃ。そういう結界が敷かれておる」
つまり、お兄様と殺し合いをしろと?
あなたは首を振る。
「そんなことをするくらいなら、ここで暮らしたほうがましです!」
「ああ、その通りだ。そうしよう」
こうして、ふたりと魔物は洞窟の中で暮らすようになり、そこで子をなし、一族をなし、そのうち結界も破り村を滅ぼし、幸せに暮らしたそうな。
めでたしめでたし。
GAME CLEAR!