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まとまりが良く、描写に無駄がない優れた作品です。未来ではなく過去や現在を語るひよりが別れに向き合えていない様子が巧く描写されています。特に「猫って、自分の死期を悟ると姿くらますとか言うしなぁ」という台詞で、物語の終わり、または二人の関係の終わりを強く意識させられました。実に効果的だと思います。
気になった部分は2点、ひとつは『庭の柿』の庭です。庭とは麻美さんが見つけた家の敷地だと思いますが、はっきり描写されていないので二重鉤括弧で強調したキーワードが曖昧なままになっています。タイトルで察しろとは思いますが(笑)、「だからさ、麻美さんがあの家を~当たり前のように思い描いてたんだ。」の台詞の中に柿の木がある情景描写があればもっと分かりやすいと思いました。
つぎに「ダイニングテーブルの三脚目の椅子~」の部分です。「専用」と「それはずっと同じ」がほぼ同じ意味なので、「同じ」が体型を指していると誤読するおそれがあります。「それはずっと同じ」を「ほとんどひより専用だ」に差し替えるか、現在のひよりの容姿を少し付け加えると良いと思います。