てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第20回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
〔
1
〕
…
〔
33
〕
〔
34
〕
«
〔 作品35 〕
»
〔
36
〕
〔
37
〕
…
〔
47
〕
魅了する壁画(魔法カード)
(
木下季花
)
投稿時刻 : 2014.08.17 14:51
最終更新 : 2014.08.17 14:58
字数 : 1000
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票
更新履歴
-
2014/08/17 14:58:26
-
2014/08/17 14:51:50
魅了する壁画(魔法カード)
木下季花
人々が忘れ去
っ
てしま
っ
たかつての時代、ある天才画家が存在した。
画家はこの世のものとは思えない、人々を惹きつける美しい絵を描いた。人々は彼の才能を称え、彼の描いた絵を欲しが
っ
た。彼はその絵を喜んで人々に渡していた。
彼の絵に使われる赤色は、そのあまりの色合いの深みと鮮やかさで、特に人々の心を惹きつけた。多くの人が彼に、あの赤色をどのように作
っ
たのかと問うが、画家は決して答えることはなか
っ
た。
彼の赤色の秘密は、実は人々の血であ
っ
た。
人が寝静ま
っ
た深夜に、血を集めるため、彼は通りがか
っ
た人を殺していた。
しかし彼の殺人はいずれ露見してしまう。
彼は独房に閉じ込められることにな
っ
た。多くの人から罵倒され、狂人だとみなされ、彼が描いた絵は全て燃やされた。
彼はしかし、独房の中でも絵を描きたいと思
っ
ていた。彼は両親に絵具と紙を差し入れてもらい、再び独房内で絵を描き始める。しかし、どうしてもあの赤だけが足りなか
っ
た。
「赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、赤色、あか
っ
あか
っ
、あかいろあかいろあかあか
……
あがあ
ぁ
あああああ!あが
ぁ
あああああああ!あがいろ!あがいろ
ぉ
おおおおおおお!」
彼の呟きは次第に大きくなり、まるで呪いのようにして辺りに響いていく。
看守は彼を隔離した。食事だけを与えて放置することにした。
そうして彼は絵を描く事すらも許されなくな
っ
た。彼は次第に生きることすらも嫌にな
っ
ていた。絵を描けない人生など、もはや何の意味もなか
っ
た。彼は死んでしまおうと思い、食事の際に出てきた皿を割
っ
て、その破片で手首や喉を傷つけた。
しかし、そこから流れ出てきたのは、彼が求め続けていた赤色だ
っ
た。
なんだ、ここにあ
っ
たじ
ゃ
ないか!
彼は狂喜し、その血をコ
ッ
プに集め始めた。
そうして、隔離された独房の中で、自らの赤色を使い、彼は絵を描き始める。
数日後に看守が訪れた際に、独房の中には、干からびた彼の死体と、転々と床に染みついた血と、そして見るも美しい、心を奪われそうな壁画が残されていた。
以後、その壁画を見た物は殺人者となり、その絵の赤色を求めるようになる。
その絵の赤色はまさに魔物だ
っ
た。呪いだ
っ
た。見るものを惹きつけ、同じようにその赤色を求める化け物にしてしま
っ
た。
それは彼が最後の力を振り絞
っ
てこの世に残した、呪い(歓喜)に他ならない。
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感 想
ログインして投票