故郷の危機(イベントカード)
森を歩いていた酔いどれペンギン剣士の耳に、爆発音が聞こえた。
(炎球の魔法? 誰かが戦
っているのか?)
音がした方に急ぐと、木々の向こうに、二人の少年と魔術師らしき少女がたくさんの魔物に取り囲まれているのが見えた。
「仕方あるまい」
魔物は理から外れた存在だ。倒しても、森の娘との約束を破ったことにはならないだろう。
酔いどれペンギン剣士はゴルフクラブを構えると、魔物に襲いかかった。
「助けてくれて、本当にありがとうございました」
「いやいや、助かったのは我が輩の方だ。町までの道がわからなくてな」
三人の少年少女の案内で道を歩きながら、酔いどれペンギンは片方の翼をパタパタと振った。
それに手助けはいらなかったようだし、と心の中で付け加える。
十六、七と若い彼らは、想像以上に強かった。自分にはまだまだ及ばないものの、多くの戦いを経験してきたようである。
「ところで、あんたは何者なんだ? 本当のペンギンじゃないよな?」
少年の一人が無遠慮に聞いてくる。
「魔法や呪いで姿を変えられたってっヤツ? もしかして、実は女で三十歳以上だったりしない?」
「失礼だよ、ヤマタ! ごめんなさい。こいつ、育ての親の式神の影響で熟女が好きで」
「いや。女は五十からと言っているミツマタの師匠に比べたら、俺なんてまだまださ。で、ペンギンさんって何歳?」
「だから、初対面の相手に歳を聞かないでよ」
少年たちのやりとりに、酔いどれペンギンはクスリと笑った。
「苦労しているね。ええと、君は……」
「あ、僕は文太って言います」
「ブンタ? 変わった名前だね。それにメタリックグリーンの瞳とは珍しい。遠くから来たのか?」
「遠くと言えば遠くですね。僕は異世界から来ましたから」
「異世界?」
そうよ、と魔術師の少女が口を開く。
「私が魔王を倒すために召還したの。それがこんな子供だなんて……しかも、共に旅立つ運命にあった大巫女様の養い子が熟女好きで、途中で出会うはずの仲間がペンギンだなんて、私が受けた神託はいったいどうなっているのよ……」
勝手に泣き崩れる少女の言葉に、酔いどれペンギンは耳を疑った。
「魔王、だと?」
「はい。さっきの魔物たちも魔王の手先です。僕たちは、魔王に占領された国を救うために旅をしているんです」
その国の名に、酔いどれペンギン剣士は愕然とする。
それは、かつて人間だった時に住んでいた国だった。
【効果】
故郷の危機である。あなたは急いで帰らなければならない。