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3 ウサギはごちそうを求めて
「大変、大変! 急がなくっちゃ!」
雪が降る町中を、頭にウサギの耳を生やした少女は走っていた。
今日はクリスマス・イブ。
恋人たちが愛を語らう特別な日である。
(それなのに、わたしったらまだ何の準備もできていないなんて!)
部屋の飾りつけは何とか終わったものの、クリスマスのごちそうも、おいしいお酒も、ケーキだってまだ買っていない。
あわてて家を飛び出したが、町中あちこちにある看板やポスターの表記ゆれが気になって仕方ない。見かける度についつい立ち止まってしまい、気づけば辺りはすっかり暗くなっていた。
(ああ、早く手に入れなければ!)
おいしいごちそうも、おいしいお酒も、豪華なプレゼントも。
そして、素敵な恋人も早く狩らなければ!
急ぐウサギ少女の前に、
「ヘイ! ウサギちん! クリスマスのごちそうを買いに行くのかー?」
知り合いのドクロ仮面が声をかけてきた。
「もしそうなら、すぐそこの山のてっぺんに生えているカエデの木の下にー、活きのいいごちそうと恋人がウサギちんを待っているぽへー。だから早く行った方がいいぽへー」
「本当!? すぐに行かなくっちゃ!」
愛用の斧を携えたウサギ少女は、雪道を駆け抜けていった。