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南の島でした。
夜の海は穏やかで、無数のプランクトンたちが数えきれない生命を燃やしていました。
波間に、エチゼンクラゲが漂っていました。
無数に生まれたきょうだいたちはみな、アジやカワハギに食べられてしまいました。ふうわりふうわりと漂っているうちに、いつの間にかひとりぼっちになっていました。海にいる他の魚たちは、漁師たちが争って捕まえようとします。でも、エチゼンクラゲを捕まえようとする者はいません。エチゼンクラゲには毒がある上、人間たちにとってはおいしくないのです。そして、大きさは二メートル近く、重さは百キログラムを超えていました。うっかり網にかかると破れてしまうので、かかりそうになると漁師たちは棒で突き離そうとします。エチゼンクラゲの身体にはあちこちに傷ができました。それでも、ここまで大きくなれば他の魚たちにも襲われません。月夜の海にぽっかりと浮いて、プランクトンを呑みこんではちいさなアブクを吐き出します。静かな夜でした。エチゼンクラゲの丸い身体は真上から見ると満月そっくりでしたが、それを知っているのは今のところ、夜空に浮かぶ満月だけでした。