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けれども狼だと言われた村人は良い気分ではありません。
「あの野郎、すっかり狂っちまいやがって」
最初に狼だと言われたのは酒場の娘を目当てに通い詰めていた綿畑の息子でした。迷信深い女の何人かが怖がったりからかったりするようになり、男は酒場に現れなくなりました。そうなると面白くないのは酒場の主人で、主人は羊飼いを呼び出すと皆の前で怒鳴りつけます。
一体何を考えているのかと酒瓶を振り上げた時でした。
「オマエも狼だ!!!」
気をつけろ、襲われるぞ、きっと夜になると変身するに違いない。羊飼いの少年は獣のような顔つきで叫び、大声で喚きながら焼け跡の残る羊小屋に駆け出します。
狼だ、狼だ! 狼だ!! 狼だ!!!
少年は口から泡を吹きながら、誰かが寄ってくる度に大声を出すようになりました。
狼来れり狼来れり。
或る日戯れに、羊を守る子供ありて。
詩人が何を考えていたのか、そして何処へ向ったのかは謎のままです。
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