・全体:
「箱」をステージにした方が多かったのは予想通り、と言ったところでしょうか。
肉体(脳)、部屋、庭、(閉じた)街。
区切られた空間の一部を専有していたものが、「無い」ことで何が変わり何が変わらないのか。
少し限定的なお題だったかと懸念していましたが、十人十色の物語が出てきて嬉しいです。
正直、「文才あるよ、小説書くよ」な人ばっかりじゃないですか。羨ましい限りです。
無い無いの私は色々と盗ませてもらいます。
誰かが「小綺麗な文章」と書いていますが、個人的にはそういう書き方凄く好きです。
まずは何よりもひらめきですから、『この文章のために書いた』みたいなのがあってもいいと思います、
その上で他の部分も流麗だとゾクゾクします、がそれができるかどうかは力量と読者とのマッチングが噛み合ってこそなのでなかなか。
・個別
No.01 朝食風景(茶屋)
http://text-poi.net/post/chayakyu/73.html
すっと通って綺麗に不気味な感じ。
先が読める内容では有りますが、かと言ってそれが文章の不気味さ不穏さを損なわない。
「あ…やっぱりか。」と嘆息するような。
不在の原因、男が狂っているのかはたまた、などと想像しながら読めました。
No.02 越中泥棒左衛門碧之介、弟子入りを目論む(しゃん@にゃん革)
http://text-poi.net/post/syan1717/44.html
前回の続き?ですかね。
相変わらず碧之介のキャラクタが良い味を出してます。最後に突然一人称で放り投げるあたりも。
ただ、なまじ小気味よくポンポンと進めて行った結果、読了後何にも引っ掛かりがなく…
No.03 薔薇の庭園 ◆veZn3UgYaDcq氏
http://text-poi.net/post/hogeotensai/2.html
結の部分を頭に少しだして、回想と言う形で追っかけ、もう一度結を持ってくることで読み出し読み終わりに注意を惹きつける。
この書き方、凄く好きです。自分には上手くかけないので羨ましいです。学ばなければ。
青い薔薇が、うーん。個人的な引っ掛かりがここに。上手く説明できる気はしませんが
…でもここをひねると色々崩れるんでしょうね、うーん。
例えば、彼女を「青い薔薇」に見立てていたとして(正否はわかりませんが)、10年の経過で色褪せた庭園にたって1つ残る青い薔薇。
絵としては映えますが、彼女の「不在」よりも「存在」を強く色づけているようで。
他の方がおっしゃっている通り、男がずっと庭園の色を保っていたのならば…と感じました。
No.04 ささやかな希望(ほげおちゃん)
http://text-poi.net/post/hogeochan_ver2/10.html
「自然に還れ」というワード選びがとても良いです。1緑/インスタント/エンチャント全破壊。じゃなくて。
後のハカセのくだり=「僕」が人工物であること、との対比だとわかってちょっとゾワッとしました。
童話のような柔らかな話でもあり、大人向けの掌編っぽくもあり。星の王子さまがそんな感じでしたっけ。
部分部分で、もう少しボリュームがほしいな―と感じました。
No.05 僕の部屋 ◆m03zzdT6fs氏
http://text-poi.net/post/hogeotensai/3.html
テーマは凄く好みです。「もう一人の僕」と言うか、実は自分が影だったという展開も凄く良い。
理不尽ものの妙である息苦しさ、生き苦しさも出せていると。
ただ、二者とも冷静すぎるというか、話がすんなり通り過ぎるというか。
もう少し「僕」のぐちゃっとした抵抗が見たかったです。
その辺、ぱちんとこちらの思考を打ち切られた感じがしてもやもやします。
No.06 空人(muomuo)
http://text-poi.net/post/muo_2/10.html
「そらびと」かな、とタイトルからは掴めませんでしたが、なるほど魂を抜かれた空っぽの人……
興味深いテーマです。ロボトミーのあたりも厨ニ心をくすぐる。
肉体の記憶と精神の記憶と言うやつでしょうか?と勘ぐってみたり。
ただ、解釈が色々と取れる、と言うと聞こえは良いのですが、逆に言うとパーツをばらまいただけと言う気もします。
キーワードになりそうな小片がすべて別々の方向を向いている気もしなくは無いです。
一様な解釈を是とするわけではありませんが、特にこの長さだと、ある程度は恣意的に解釈の方向をつけるのも必要かもです。
それがミスリードを狙うためのものであっても。
No.07 ネコン(碓氷穣)
http://text-poi.net/post/_latefragment/24.html
「行方」が解りません。
言葉遊びとして文章に面白みを出そうとするアレだったのだと思いますが、読む側としては混乱が…。
全体感想と矛盾した事を言っているかも知れませんが。
後々の文章が良いものであるだけに、ここで要らない引っ掛かりをつけてしまったのはちょっとなーと。
蛇足な気がします。言い過ぎでしたら申し訳ない。
わざわざ「行方姓が多いだけで云々」と言わずに兄弟で通しても良い気がします。
なんというか、その辺の設定は拘るところじゃなかったのでは、と。
シュレーディンガーの猫がモチーフなのでしょうか。
その辺をもっとフィーチャーしてみると一味違ったものになるかと思います。
No.08 空と白と箱と風(犬子蓮木)
http://text-poi.net/post/sleeping_husky/28.html
「はだかの王様」と似た所を感じます。何かに縋る大人と、純粋な視点でその可笑しさを見抜く子ども。
割と心にぶっ刺さる感じが好きです。
適当な感想で申し訳ない。言いたい事はだいたい他の方が書いてくださっているので。
No.09 カーテンのない部屋 ◆AvAB7qCJFc氏
http://text-poi.net/post/hogeotensai/4.html
点々転々としていて、つながりませんでした。
それ以上なんと言えばいいか解りません。
No.10 花火セットを用意して(都宮 京奈)
http://text-poi.net/post/keina_tsumiya/1.html
重たい。です。
3万字?というボリュームもありますが、序章が本当に重たい。
改行なりなんなりで少しスッキリさせるだけで若干は解消できると思います。
序章が文章と言うより長方形の文字塊に見えます。せっかちな人ならここで目を滑らせて閉じると思います。
私も一度目を背けました。
内容が頭に入りだすとするっと読めたのでもったいないです。
話の骨はしっかりとしているので、導入を工夫してやればずわわわっといけると思います。
目指せ骨太美人。
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【投票】: No.04 ささやかな希望(ほげおちゃん)
気になった作品: No.08 空と白と箱と風(犬子蓮木)
No.10 花火セットを用意して(都宮 京奈)
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読んでいてハッとしたので迷わず04を。
08はどこかの民話であってもおかしく無いな―と思える出来だったと思います。
10は力作、と言う感じ。それ故に気合を入れないとこっちも読めないのが難点でした。
次点で01か03、かな。01はくるっとまとまっているのですがちょっとインパクト不足。
蛇足:
自分の出したテーマにいくつもの切り口から物語が産まれて集まって来るのは凄く楽しいですね。
どの作品も興味深く読ませてもらいました。ありがとうございます。
提出もせずに偉そうな口だけ叩いて申し訳ない。せめて試験期間とかぶらなければ…(言い訳)
まあ、今となっては自分のレベルの低さに打ちひしがれて出す意気も消沈してしまいましたが。
今月中に書く時間がとれたら通常作としてスレに投下したいと思います。
多分、ドイツのフランス人捕虜の寓話をオマージュして、「いないものいじめ」の話を書くかと。